不動産担保ローンは、不動産を担保にして金融機関から資金を借りる融資です。
住宅や土地などの不動産資産を担保にできるため、比較的大きな金額を長期にわたって借入できます。
まとまった金額を低金利で借りられる一方、返済不能に陥ると担保にした不動産が売却されてしまうおそれもあります。
不動産担保ローンの基本的な特徴から利用時の注意点、申し込み方法などを、初めて利用する方にも分かりやすく解説していきます。
一般的な借り入れの知識は「借入とは?」にて詳しく解説しています。
不動産担保ローンの特徴
不動産担保ローンは、その名の通り不動産を担保にしたローンです。
不動産には土地、建物、マンションなどが含まれます。金融機関によっては、本人所有ではない不動産(家族や法人名義)も担保にできるローン商品を取り扱っています。
不動産担保ローンの特徴には下記のものがあります。
- 低い金利
- 長期間の返済期間
- 借り換えが可能
- 担保評価に基づく融資額の決定
不動産ローンならではの特徴を理解することで、賢く活用できるでしょう。特徴をそれぞれさらに詳しく解説していきます。
低金利で融資を受けられる
不動産担保ローンの最大の魅力は、他のローンに比べて金利が低い点にあります。担保となる不動産があるため、金融機関の貸し倒れリスクが低く抑えられることが、低金利の理由として挙げられるでしょう。
低金利により、融資を受ける際の返済負担を軽減できるため、長期的な資金計画を立てやすくなります。
銀行や消費者金融などの無担保貸付では15%~18%程度の金利が平均的ですが、不動産担保ローンのような有担保貸付の平均的な金利は4%です。
長期間の返済も可能
不動産担保ローンは、返済期間を長期に設定できます。多くの不動産ローンでは、10年から35年程度の長期間での返済が可能となっています。
返済期間が長いので月々の返済額を抑えて、資金繰りの負担を軽減することができます。ただし、長期にわたる返済では利息の総額が増加するため、返済計画をシミュレーションして立てておく必要があるでしょう。
別のローンへ借り換えが可能
不動産担保ローンでは、金利の変動や他の金融機関の条件がより有利になった場合に、借り換えが可能です。
より低金利のローンに借り換えると、返済総額を減らせる可能性があります。借り換えの際には、手数料や条件変更に伴う影響を事前に確認することが重要です。
また別のローンから不動産担保ローンへの借り換えも、金利負担を下げるために有効な方法です。たとえば無担保ローンから不動産担保ローンへ借り換えると、金利負担を大きく軽減できるでしょう。
担保評価により融資額が決定
不動産担保ローンの融資額は、担保となる不動産の評価額に基づいて決定されます。不動産の価値が高ければ高いほど、より大きな金額の融資を受けることが可能です。
しかし、不動産の市場価値は変動するため、担保評価額も時間とともに変わることがあります。そのため担保評価額を把握しておき、適切な時期に融資を申し込むことが重要です。
不動産担保ローンのデメリット
まとまった金額を借りられる不動産担保ローンには、知っておきたいデメリットもあります。
所有する不動産に関して慎重に考えたい側面もあるため、不動産担保ローン利用前には十分注意しておきましょう。
融資までの時間が長いことが多い
無担保カードローンに比較すると、不動産担保ローンは担保を評価する時間がかかるため、審査時間は長くなります。
今は消費者金融なら、最短即日で融資を受けられるカードローンばかりですね。数分で審査が完了し、そのまま銀行口座に振込を受けられるので利便性も高いです。
無担保カードローンに比較すると、書類準備や、審査所要時間、契約、融資までの一連の流れはやはり長くかかってしまうでしょう。
どれほどスピード融資を謳っている不動産担保ローンでも、審査に数日、融資までには1週間から10日ほどはみておきましょう。
返済できないと不動産は売却される
不動産担保ローン利用時に最も注意しておくべき点といえるのが、返済不能に陥った場合です。
不動産担保ローンでは、担保となる不動産に抵当権の設定登記をします。
抵当権は、お金を借りた人が返済できない場合に、貸した側が不動産を売却し貸付金と利息を回収する権利をいいます。
担保となる不動産の売却を避けるためには、慎重な返済計画が求められるのです。
ローンの利用に手数料が必要
無担保カードローンのように、入会金や手数料がかからないローンと異なり、不動産担保ローンは手数料が必要です。
不動産を担保にするために、事務手数料、不動産鑑定費用、印紙代、登記費用などがかかってくるのです。借入する費用が大きな額ではなくても、トータルで10万円以上の手数料となることもあり注意が必要でしょう。
不動産担保ローンは、金利は確かに低いけれど手数料などの費用負担が思わぬ額になることもあります。
不動産担保ローンを利用する際の注意点
不動産担保ローンを利用する際には、注意しておきたい点があります。
最も重要なものとして、担保評価に基づく融資額の決定、固定金利と変動金利の選択、そして返済計画の立て方があげられるでしょう。
不動産担保ローンの、ローン利用に伴うリスクを最小限に抑えることができます。
担保評価による融資額の決定
不動産担保ローンでは、担保となる不動産の評価額が融資額の決定に直結します。
不動産の評価は、市場状況、物件の位置、状態など様々な要因によって変動するため、融資を申し込む前に現在の不動産価値を把握しておくことが重要です。
また、評価額が期待より低い場合、必要な融資額を確保できない可能性もあります。
場合によっては、所有している不動産を担保にできないこともありますし、予測しているよりかなり低い額でしか融資を受けられないかもしれません。
借入する際に不動産の価値が著しく下がると、追加担保を求められるケースもあります。
事前に複数の金融機関から情報を収集し、国税庁ホームページの「路線価」などで不動産の価値をしっかり調べておきましょう。
固定金利と変動金利の選択をどうするか
不動産担保ローンには、固定金利型と変動金利型の二つの選択肢があります。
固定金利型は、返済期間中金利が変わらないため、返済計画を立てやすいです。
ただし変動金利に比較すると、金利変動リスクを見越して高めの金利設定のローンが多くなります。
一方、変動金利型は、市場の金利変動に応じて返済額が変わるため、将来の金利下降を期待できますが、金利上昇時のリスクも考慮する必要があります。
変動金利は通常半年ごとに見直され、元本返済の割合が減少することになるため、返済計画が不安定になるケースも想定しておきましょう。金利水準が横ばいや、下落傾向のときに変動金利を選択すると有利です。
固定金利と変動金利のメリットとデメリットは対照的なものですから、自分がどのように返済していきたいかきちんと考えておかないといけません。
余裕のある現実に即した返済計画の立て方
不動産担保ローンを利用する際は、現実的な返済計画の立案が必須です。
大きな額を利用するローンですから、長期間にわたる返済となるため、収入や支出の変動を見越した柔軟な計画が求められます。
つまり返済期間の10年~35年程度の返済手段となる収入に関して、きちんと考えておかないといけないわけですね。
現実的な返済計画とは、返済負担が収入に占める割合を適切に保ち、緊急時に備えた貯蓄計画も合わせて考えることです。
予定外の変化が起こることも想定して、常に余裕を持たせて返済していきましょう。
不動産担保ローンを申し込みできる金融機関
不動産担保ローンは、銀行や信用金庫、消費者金融、専門のローン会社などが取り扱っています。それぞれの金融機関によって融資条件やサービスが異なるため、事前の比較検討が重要です。
銀行や信用金庫からの申し込み
銀行や信用金庫の不動産担保ローンは、低金利で安定したサービスを期待できますし安心感も大きいですね。
ですが、いずれも審査が厳格であることが多いです。
担保とする不動産の所在エリアが限定されている、申し込み者や担保不動産の条件が厳密に設定されているなど、そもそも申し込みが難しいケースもあります。
不動産担保ローンの資金使途はある程度自由度があると言われていますが、銀行の提供するローン商品は限定的なものも見つかります。
事前に申し込み条件をきちんと満たしているか確認すること、また必要書類を整え、余裕のある返済が融資成功のカギとなります。
不動産担保ローン専門のローン会社からの申し込み
不動産担保ローン専門のローン会社も、選択肢の一つです。
不動産担保ローン専門会社は、不動産の担保ローンに特化したサービスを提供しており、柔軟な融資条件や迅速な審査を売りにしているものが多いです。
条件も銀行ほども厳しくないため、申し込みやすいと感じますが、金利や手数料が銀行より高めの傾向です。
消費者金融の不動産担保ローン
消費者金融の中でも、アイフルは不動産担保カードローンを提供しています。
アイフル(AGビジネスサポート)の不動産担保カードローンのスペック
融資対象者 | 法人または個人事業主 |
融資額 | 100万円~5,000万円 |
契約利率 | 5.0%~14.8% |
担保 | 土地・建物 |
抵当順位 | 不問 |
アイフルの不動産担保カードローンは、手数料や保証料は不要で、担保物件の所有者や抵当順位は不問です。
不動産担保カードローンは、事業資金として必要に応じて繰り返し借入や返済ができます。ただし、サラリーマンやパートアルバイトなどのように自営ではない方は利用できません。
最適な金融機関を選択するためには、複数の不動産担保ローンの条件を比較し、自身の状況に最も合った選択をすることが望ましいです。
不動産担保ローンで融資を受ける流れ
不動産担保ローンで融資を受けたい場合には、以下のおおよその流れを確かめておきましょう。不動産担保ローンそれぞれで、実際の融資までの流れは異なることもあるため、自分が申し込むローンで確かめておいてください。
- 仮審査
- 面談・本申し込み
- 不動産調査
- 金融機関やローン会社による審査
- 契約
- 融資
不動産担保ローンでは、インターネットでの申し込みが利用できるものが多いです。
ただし仮審査のみインターネットで、通過後に審査担当者との面談や本申し込みという流れのローンもあるため注意しましょう。
不動産担保ローン申し込み時の必要書類
不動産担保ローンの審査を受ける場合の必要書類を確かめておきましょう。
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 実印
- 印鑑証明
- 納税証明書・固定資産税納付書
- 収入証明書(源泉徴収票など)
- 不動産登記簿謄本
- 借入残高証明書
- (法人の場合なら)商業登記謄本・決算書類・事業計画書
本申し込みを行う場合には、本人確認書類が必要です。審査の過程では与信も判断されるので、納税証明書や収入証明書なども必要になります。
また、担保不動産の状況を確認する書類として不動産登記簿謄本や借入残高証明書なども必要です。
金融機関によって異なる点もあるため、申し込むローンについて調べておくようにしましょう。
不動産担保ローンの審査は総合的判断で進められる
不動産担保ローンの審査は、申し込み者と担保を総合的に判断して進められます。
カードローンが申し込み者の与信のみで審査を行うのとは大きく 異なっています。
申し込み者の信用力
申し込み者の信用力、いわゆる与信はどのローン審査でも必ず評価されるものです。
収入、法人なら利益等の安定性や継続性、ローン利用履歴を判断していきます。属性といわれる年齢や勤務状況、住居の状況(持ち家か賃貸か)なども重要な要素です。
ローンの利用状況は、個人信用情報機関で照会されますので、必ず正直に申告しましょう。
不動産の価値の審査
審査では不動産の評価を行い、担保評価額が算出されます。
不動産の価値が高ければ、審査通過がより確実になりますし、融資される額も大きくなります。
不動産の価値(市場価値)は場所や大きさで決まります。建物は築年数がたてば価値が下がります。
不動産担保評価額は、データだけでなく周辺調査などの現地調査を伴います。
土地と建物の市場価格に、担保掛目をかけて担保評価額を算出します。
掛目は70%~80%といわれていますが、金融機関によっては60%のところもあるため、評価額は金融機関により、大きく違ってくるケースもあります。
不動産担保ローンの利用に向いている方
どんなときに不動産担保ローンを利用すると良いのでしょうか。
資金繰りを改善したい方
銀行等で利用しているローンの返済が厳しくなってきたときに、不動産担保ローンが利用できれば資金繰りを改善できることがあります。
不動産担保ローンの返済期間の長さによって、月々の返済額が抑えられるので、資金繰りに問題を抱えている事業主の方や経営者の方におすすめです。
相続費用を確保したい方
相続時に、相続税、代償分割、遺留分減殺請求などで支払いが高額になることがあります。
相続する不動産を担保にして、相続費用を確保するための融資をローンで活用するのも一つの方法でしょう。
金利が高いローンからの借り換えをしたい方
不動産担保ローンは、低金利かつまとまった額の利用も可能なため、利用中の高金利のローンからの借り換えに適しています。
また、融資額を大きくできるので、複数ローンのおまとめローンとしての利用にも最適です。返済に余裕を持たせたいときに、最適な方法になります。
不動産担保ローンでよくある4つの質問
- 住宅ローン利用中でも不動産担保ローンで借りられる?
まず結論からいうと融資を受けられる可能性はあります。
ただし、担保不動産に第二順位の抵当権を設定する必要があります。
また、現在の住宅ローンの残高によっては融資は不可です。
頭金を入れて不動産を買った方、住宅ローンの繰上げ返済をしている方、住宅ローンの返済期間が短く残高の減りが早い方は不動産担保ローンを利用できる可能性があります。
- 自分以外の人が所有している不動産を担保にできる?
金融機関によっては、親族が所有する不動産で融資を受けられることもあります。
法人なら、融資を受ける会社の役員が、物上保証人になれば融資を受けられる可能性があります。
- 共有名義の不動産は担保にできる?
共有している人全員が連帯保証人になれば融資を行う金融機関もあります。担保となる不動産と、誰と共有しているかによって融資が左右されるといえるでしょう。
- 信用情報に不安があっても不動産担保ローンなら借りられる?
一般的に信用情報に問題がある申し込み者は、貸付を避けられるといわれています。
ただし、不動産担保ローンの場合は返済不能に陥った場合の担保があるわけですから、融資を柔軟に検討する金融機関も一部にはあります。
不動産担保ローンに関するまとめ
不動産担保ローンは、融資を受けられる資金の大きさや、金利の低さ、返済期間の長さなどメリットが大きいものです。
しかし融資までの日数が長く、手数料がかかるため、緊急時に借りたい時には適していません。
また何より返済不能時に、所有している不動産を失ってしまう点を把握してから不動産担保ローンを利用することが大切です。
不動産担保ローンのメリットの大きさとデメリットはしっかり比較して検討しましょう。